ペットを残して先に逝くということ 〜友情と約束に託された猫たちの未来〜

私たちがペットを迎えるとき、心のどこかで「この子とずっと一緒に生きていきたい」と願います。けれども現実には、飼い主である私たちが先に病に倒れたり、命の限りを迎えてしまう可能性は決してゼロではありません。その“もしも”にどう備えるかは、ペットを愛するすべての人にとって避けては通れないテーマです。

今回のお話は、一人の飼い主さんと、古くからの友人である「みーちゃん先生」との間で交わされた約束に基づいています。

その飼い主さんは、生前とても猫をきれいに、愛情深く育てていました。毛並みはいつも美しく整えられ、爪も手入れされ、猫たちは幸せそうな表情で暮らしていたのです。そして猫たちは、時折遊びに来ていたみーちゃん先生のことも覚えており、顔なじみの存在でした。

しかし、あるときから飼い主さんの体調は長い年月をかけて少しずつ変わっていきました。
じわじわと病気が進行していき、出来ることが少しずつ減っていきます。しかし、それでも必死に猫たちのお世話を続けていましたがやがて半年ほど前からはもう思うように出来なくなってしまいました。

ご飯やお水はご主人が与え続けていたので命に関わることはありませんでしたが、日々のブラッシングや爪切りといった細やかなケアまでは手が届かず、猫たちはあっという間に毛玉だらけに…。愛らしかった姿は影を潜め、重く絡まった毛が体を覆い、まるで「毛玉お化け」のようになってしまったのです。

その姿を目にしながらも、飼い主さんはきっと胸を痛めていたことでしょう。
「本当はもっときれいにしてあげたいのに…」
その無念さを思うと、胸が締めつけられるようです。

けれども飼い主さんには、ずっと前から心に決めていたことがありました。
「もし私に何かあったら、この子たちを必ずみーちゃん先生にお願いしてほしい」

それは長年の友情と信頼があったからこそ言えた言葉でした。そして、その願いは家族によってしっかりと守られました。飼い主さんが旅立たれた後、猫たちは約束どおり、みーちゃん先生のもとへ託されたのです。

長時間にわたるケアで、固く大きな毛玉はひとつずつ丁寧に取り除かれました。その過程は決して簡単ではなく、猫たちにも先生にも根気と愛情が必要でした。けれども、少しずつ軽やかさを取り戻した猫たちの瞳は、やがて再び輝き出しました。本来の自由な姿を取り戻し、安心した表情で過ごす姿は、まさに「未来につながった命」そのものでした。

この出来事は、私たちに大切な問いを投げかけています。
「もし自分が先にいなくなったら、この子はどうなるのだろう?」

ペットは私たちより短い命を生きることが多いですが、時には逆のことも起こり得ます。だからこそ、信頼できる人や団体に託す準備をしておくことは、飼い主として最後にできる最大の愛情であり、責任なのです。

今、みーちゃん先生に託された猫たちは、キャットグルーマー協会の神戸スクールで元気に暮らしています。その姿は、飼い主さんが遺した「約束」と「想い」が確かに受け継がれた証です。

どうかこの記事を読んでくださったあなたも、ほんの少しだけ考えてみてください。愛するペットの未来を守るために、もしものときに誰に託すのかを。その選択は、あなたがこの子に贈る最後で最大の愛情になるはずです。

👉 実際のレスキューの様子や猫たちの現在の姿は、YouTube動画でご覧いただけます。どうぞ最後まで見届けてください。

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